2016/17シーズン世界マスターズ(WCM)レポート
今年度のFIS世界マスターズ大会(WCM)は、2017年3月20日~24日スイスのマイリンゲン-ハスリベルグにて、開催されました。 マイリンゲンは、チューリッヒからグリンデルワルトへ向かう途中、インターラーケンの手前に位置する標高約600mの村。 そこからケーブルとゴンドラを乗り継いで上がる1700mがベースとなるスキーエリア ハスリベルグが大会会場で、ゴンドラの終点から後ろを仰ぐとヴェッターホルンとアイガーを見渡すスイスならではの景色が広がるロケーションです。 昨年から国内でのFISマスターズ大会が始まり、FISマスターズポイント保持者が増えたことから、今年の日本からの参加者は、昨年の26名から34名に増加しました。 ヴェッターホルンをバックに、日本選手団。
東京を始め、青森、秋田、群馬、長野、埼玉、神奈川、京都、大阪と9都府県から選手が集まり、10名の方々が初めてのWCM参加でした。 初参加の内4名が男子Aカテゴリーで、これまで層の薄かったAカテゴリーエントリーが、一番若いA-1(30歳代)を含め合計9名のとなったことが、今年の収穫でした。
アイガーをバックにくつろぐ、若手グループ。
レース会場は、スキー場ベースから更にもう一本ゴンドラで上がる標高2250mのトップからトラバースした場所に、標高差310mのコースをTバー1本でカバーする、レース専用バーン(Ski Renn Zenrum : Ski Race Centre)が展開され、SG、GS、SL全てのレースがここで開催されました。 また、SLとGS/SGレースを同時進行でこなせる運営体制は、さすがに本場ヨーロッパを感じさせます。 写真は、GSのセットされたコースと、Race Centreの全景。 GSコースの左側、Tバー沿いの下部が、SLコースです。
男子A カテゴリーSGの、インスペクション風景。
今年の大会は天候に悩まされる大会で、大会2日目のA SLとC SGは、濃い霧のため1時間スケジュールを遅らせて実施。 C4 SGでは中谷順子が、ラップに1.4秒差で見事スイス、ドイツに次ぐ銅メダルを獲得。
大会3日目は朝から小雨が降り、濃いガスも巻いて2時間待機の上、B SGをキャンセル、C SLのみを霧の中で実施。 生き残りゲームとなる厳しいコンディションの中、C6 SLで初参加の福原眞澄が見事3位に入賞しました。
このスケジュール変更を受けて翌4日目は、A SGとB SLを午前中に同時進行し、A SG終了後にC GSを実施すると言う強行スケジュールとなり、地元大会運営陣の苦労が忍ばれます。 しかも朝からの強風によりゴンドラが断続的に停止し、昼前には運休となったため、その前に選手全員がゴンドラでレースセンターのエリアに上がり、そこから下ることはせずにTバーのみでスケジュールを消化。 風に影響を受けない距離の長いTバーがヨーロッパで重宝される理由が良く分かる経験となりました。 この日も初出場の原田洋子が、C8 GSで3位と健闘。
カテゴリーAで初出場の吉田裕治は選手層の厚いA5の中で世界の壁を感じつつも、GSで10位、SLでは13位ながら二桁のポイント獲得と検討し、今後への手ごたえをつかんだ模様。 スタートに於いては、周りの選手の注目を集める存在となっていたのは頼もしい限りです。
ポディウムの常連Cカテゴリーの先輩方も例年通りの活躍で、金4個、銀4個を獲得。 日本の民間外交を大いに盛り上げています。
今年も34名と言う多人数の遠征の中、打撲等によりクリニックを訪ねるケースがあったものの、大きな事故は無く全員無事に帰国することが出来ました。 一方、米国チームのキャプテンがGSレース中に転倒、骨折のためヘリコプタ搬送されるなど、大きな事故と隣り合わせであることを実感する状況もありました。 今後はWCM派遣選考基準を検討してチーム編成を再考すると共に、日本のマスターズレーサーの方々には、多くの国々で開催されているFMCレースにも目を向けていただけると、更にアルペンスキーマスターズ大会による国際交流が広がると感じられる遠征となりました。
文責:福田 俊介
SAJマスターズ委員
東京都スキー連盟